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四面楚歌

隊員日記「四面楚歌」の写真

プレッシャーに弱い私は、お客さんが後ろに立つだけで緊張してしまいます。 こればかりは生まれつきというか、開錠現場を幾度経験しても治りません。

たいていのお客さんはピッキング作業など初めて見ますから、「どれどれ、どうやって開けるんだ」と物珍しそうに作業をのぞき込んできます。 その視線を感じるとどうも指先がこわばり、余計な力が入ってしまうのです。

今回ピッキングした車はアウディのA3。休日の朝。 マンション前でお出かけ用の荷物を積み込み中にインロックという状況。 そういうケースはよくあるのですが、今回はタイミングが悪かった。

ただでさえ開錠未経験の輸入車で緊張しているというのに、 「どうされたんですか?」 「あ、インロックしてしまったんですか」 と、同じマンションの住民の方が次々にお客様に声をかけます。 和気あいあいとしたファミリーマンションのようです。

そうこうしているうちに皆で雑談が始まり、雑談していると自然と私の作業に視線が集まります。

こうなるともう、すでに指先の感覚はありません。脚の感覚も。 全員の視線を背中に痛いほど感じて、頭は真っ白。 重心もおぼつかず、洪水のように滴る汗をぬぐいながら、時たま声をかけられても腑抜けた返事をするので精一杯。

なんとか10分ほどで鍵は開きましたが、作業が終わって立ち上がる私の足は生まれたての小鹿のように震えていました。

開錠後の手続きも終わり、安堵とともにセーフティーエリアであるミライースに乗り込み、以前A隊長と冗談で話していた「魔法で開いたらいいのにね」という言葉をしみじみと思い出すP隊員でした。

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