新宿でバッテリジャンプの依頼滞りなく終了。本部への帰途に着く。途中、甲州街道を進み中野通りのオーバーパスも下りきったとこ100mほど先でいきなり渋滞が始まる。どうやら車が止まっているようだ。『故障か・・』クラクションの嵐の中、車に近づくとシルバーの子ベンツ、いわゆる190E。運転者は顔面が蒼白になって固まっている。 無理もない、ヨリによってこんな場所では・・走っている最中に止まってしまうのだからガス欠でないとすれば現場復旧は厳しそう。とりあえず車を脇に寄せさせようと車を押す事にした。「ニュートラに入れて」 「ハ・ハイ」左端に寄せては見たものの邪魔加減には変わりない。
窓を開けさせ石になったお兄さんを問い詰める。「セルは回りますか?」 「ハイ」 ・・確かに回っているがエンジンはかからない。「ガソリンは?」 「入っています」 ・・こりゃ駄目だ。ここで立ち去っても良かったのだが、そうしたらこのお兄さんは間違いなく泣きだす。と判断し、車をさらに押す事にした。 だが路肩は遥か150mはある向こう。一人では厳しいなと考えていると、後ろから「手伝いますよ」の声バイク乗りの若い衆が声を掛けてくれた。二人ならナントカ・・と思う間もなくもう一人参加。「押しますよ」の声固まったままの運転者は使い物にならなそうなので三人で押す。ゆっくりとだが車は動いていく。 三人ともバイクは路上に放置してきた。
100mほど進んだあたりから隊長の身体に異変が起きた。 「無茶苦茶キツイ」のだ息は上がるは足は震えるはどうにも力が入らない。が、ここで引いては手伝ってくれている若い衆に申し訳ない。息も絶え絶えにたどり着く頃には、車に引きずられていただけだった。あまりの衰弱ぶりに若い衆が 「だ 大丈夫ですか?」と声を掛けてくれるも返事が出来ない。膝もガクガクいってまともに立ってられないのだ。運動不足を自覚はしていても一日一箱の煙草もやめられず現在に至る。その体力のなさに泣けた。運転者のお兄さんが感謝の意を余すことなく表現していたが、こちらは意識が飛び飛びだ。手に三千円握らされた。
「 俺は金が欲しくてアナタを助けた訳じゃない、迷惑を被るであろう他の何百台という車を助けたのだ!」
勿論、声など出せないので眉毛で啖呵を切る、。二人の若い衆を手ぶらで返すのも悪いのでそのまま受け取る。三人で千円ずつ分けた。何よりも嬉しかったのが、世知辛い世とはいえあの状況で「手伝いますよ」といってくれた事だ。捨てたモンじゃないぜ東京。颯爽と立ち去る予定だったが、息が上がってどうしようもないので30分公園で死んでいました。
