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革の中を泳ぐ

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夕方過ぎ、文京区よりメルセデスE350の解錠依頼。三方をマンションに囲まれた袋小路の駐車場が現場。閑静な住宅地なので辺りは郊外の様に静かだった。

現着連絡をするとお風呂上りの奥さんがいらっしゃった。鍵の所在をお聞きするとラゲッジスペース左角にぽつねんとあるのが見える。ハッチバックに錠があればアクセスは一番近いがこの車輌には無い。と言う事で左運転席を解錠する事に。

作業を始めようとしたところで、「間もなく旦那が来ますので後はお願いします」と奥さんは自宅へ戻られた。準備をしていると旦那さんがいらっしゃったので作業開始。サクサクとピッキングしシリンダーを回す。後は解錠位置まで回しドアを開けるだけ。ただ、間違いなくセキュリティーが発報する。その旨を伝えるとお客さんは僕の後ろでスタンバイ。そしてドアを開けた。

パァーッ! パァーッ!静粛を突き破りけたたましく緊急事態を伝えるクラクション。早くキーを取りだしてセキュリティーを解除しなくてはいけない。振り返りお客さんを見ると車体後方で「ここにあるから早く取ってー!」とキーを指さす。てっきりお客さん自身が車内に入るものと思い込んでいたので焦るH隊員。急いで靴を脱ぎ車内に入る。運転席と助手席の間、上の方にある狭い隙間を通ろうとするが、シートに使われている上質な革が服を引っ張り行く手を阻む。強引に動くと革を痛めてしまいかねない。頭を天井にぶつけながらシートを越えようとするが思うようには進めない。暫くジタバタとしていると警報が鳴りやんだ。思いっきりホッとする。

落ち着いたところで自分がどうなっているのか確認すると、脱力したので運転席と助手席の間に横を向いて挟まっていた。その様はまるで鯉のぼり。お客さんに笑われてしまった(涙)今後このような状況の場合「僕が入ってお取りしますか?」と確認し、必要ならどの様に移動するか予めイメージしてから突入する事にします。

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