
某ドイツ車の解錠依頼。現場はディーラーさんの工場。
鍵穴に工具セットしピックで中を探っていると、今まで聞こえていた整備をする音が消えている事に気付く。しーんとしている工場内。も、もしや…徐に振り向くと微妙な距離で整備の方たちに取り囲まれていた。思わずビクっ!となる。すると一番近くに居た方から「気にしないで」と言われた。「は、はい…」と言ったものの、ザクっ!ザクっ!と背中に刺さる視線を感じる。いつになく激しい緊張に囚われてしまった。
もっと差し迫った状況は過去にいくらでもあった筈なのに、今日に限ってどうした事かこの動揺。脈は速くなり動悸がしてくる。そんな中、脳が記憶領域で激しく何かを探しいる事に気付いた。その意味は全く分からない、いったい何を探しているのか?こんな状況では開くモノも開かなくなってしまう。
はぁ はぁ ドキ ドキ混乱する頭の中で「気にしないで」と言う言葉のカギが記憶の錠を回した。「はっ!」と振り返りその言葉を言われた整備の方を見るとニコっと微笑む。その瞬間、以前お会いした時の記憶が鮮明に蘇った。
それは数年前。とあるデパートのタワーパーキング。出入庫のターンテーブルを塞いでのインロック。休日の夕方とあり入庫の車は渋滞を作り、出庫出来ない他のお客さん達はイライラしていた。そこで車のオーナーさんと他のお客さんから責められていたのが不意のインロックで呼ばれたディーラーの方。戦々恐々としている場合では無いので人込みを割って入り作業を始めると、他のお客さんから罵声を浴びせられる。その時、「気にしないで」とディーラーさんが言ってくれた。
もう随分前の事なのですっかり奥底に行ってしまっていた記憶。それがあるキーワードで切迫した緊張感までも蘇らせた。人間の記憶って不思議ですね。
