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芳しき香り

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深夜、神奈川県北部より解錠依頼。

日中だと2時間弱かかる距離も、深夜ともなれば到着まではイメージしていたのより遥かに早い。後ろに付くと温かなトレーラーに続き郊外の国道を走った。

今回依頼を受けた車輌の鍵穴はかなり下の方に付いているので、地面に座り込まないと作業が出来ない。躊躇なく座り込むとお客さんが銀色のアルミシートを貸してくれた。キャンプで使っているので土足は気にせず使ってくださいとの事。気温が下がりきっていたのでありがたく使わせて頂いた。

作業を始めて数分。何処からともなく美味しそうな匂いがしてきた。それは嗅いだ事がある結構好きな匂い。はて?なんの匂いかな?作業に集中していたので直ぐに思いつきませんでしたが、暫くして焼き肉の匂いだと気付いた。

定期的に鼻腔に感じる芳しき香り。でもこの深夜に焼肉をやっていると言うのも不自然だ。近くに焼肉屋さんはもとより食べ物屋さんがない住宅街。一向に出所のイメージが湧かない。そうこうしているうちに作業で身体が温まったのか、首周りが熱く感じたのでネックウォーマーを外してアルミシートの上に置いた。

暫くし作業も終わったので手近にあったネックウォーマーでアルミシートを軽く拭き、お客さんに感謝してお返しする。そしてネックウォーマーはそのまま荷箱に入れて現場を後に。

帰りのガソリンが無かったのでスタンドに寄り高速に乗る前の防寒としネックウォーマーを付けた。すると先程の焼き肉というかバーベキューと言うか、兎に角腹の空く匂いがヘルメット内に充満してきた。「一体これはどういう事だろう?さっきの匂いがシミついた?」身体にシミつくほど強烈に匂いが漂ってはいなかった。それにしては焼き肉を食べた後のような勢い。はて?これはいったい??大量の疑問符を残しながらも高速のゲートを潜った。

流石に高速走行をすれば匂いはしないだろうと思っていたが、意に反し減るどころか更に強烈になったような気さえしてくる。ますます疑問符が浮かぶ。そこで現場にて匂いがしてきた状況を思い返すと、作業中に下を向いた時に匂いが強くなった事を思い出す。では匂いの大本はそこにあったのか?あ!分かった!!お客さんはアルミシートをキャンプに使っていると言われていた。匂いの元エキスはそこに付いていたのでしょう。そう言えば返却する際、ネックウォーマーで拭いた。だから高速走行中の今も激しく匂うのだ。

原因が分かってスッキリしましたが空腹中枢への刺激は止む事を知らず、拠点へ戻るまでは腹の虫との戦いにもスタミナを費やしたのでした。

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