
ホンダ・スティードのジャンプ依頼でお客さんの話を伺うと、単純なバッテリー上がりではない印象を受けた。始動不能になった前後の状況は、2時間程走った後コンビニに入り、10分後に再始動しようとしたらセルが回らなくなったとの事。バッテリーの突然死も考えられますが、今までの経験上で思い浮かぶのはレギュレーター・ジェネレーター・CDIの故障。一抹の不安は拭えません。
スティードのバッテリーは運転手の着座位置真下にある。バッテリーに到達するには右サイドカバーを開け無ければならないのですが、右側はVツインのリアバンクから伸びるエキパイが直ぐ近くを通っている。走行直後はかなり熱くなっているので火傷を回避する為、メカニックグローブと言う名の軍手を着け慎重にサイドカバーを外した。バッテリーを軽く引っ張り出し、テスターで電圧を測ると13.0vで、特に問題が無いように思える。取りあえずブースターを繋がずセルボタンを押してみると、セルモーターの音は元よりマグネチックスイッチが接触する「カチっ」っと言う音すらしない。電圧があるのにマグネチックスイッチが動かないのはどこかで電気が遮断されている可能性が濃厚。真っ先に思いついたのはキルスイッチ。その接触不良かな?と何度がキルスイッチのオンオフを繰り返してみたが通電は回復しなかった。次に考えられるのはセルスイッチの接触不良。ヘッドライトが常時点灯式のホンダ車なら、メインキーをオンにしてヘッドライトを見ながらセルスイッチを押すと、ある程度判断できます。メインキーをオンにしたのにヘッドライトが点かない、若しくはヘッドライトは点くがスイッチを押したとき消えない場合等(車種によって異なります)はセルスイッチの接点不良の可能性が高い。スティードの前側に回り、セルスイッチを押してみるとヘッドライトが消えなかった。取りあえずスイッチ部分の隙間から接点復活剤をスプレーし、再度スイッチを押すと、マグネチックスイッチがカチっと鳴りセルの回る音がした。原因はスイッチの接触不良の可能性が高いので、スイッチボックスをバラして洗浄&グリスアップ。その後、お客さんにセルを押してもらうと、待ってましたとばかりに水冷V型2気筒は唸りを上げ、頗る安定したアイドリングを始めた。
暫く様子をみた後、電圧を測るとアイドリングで12.4v。回転を上げると14v以上になっていたので電装系も大丈夫そうな印象。ですがスティードを買ってからまだ3日目らしいので、一応購入したお店での点検を推奨させて頂いた。
特に問題なさそうなのでサイドカバーを戻そうとした時、手元付近から煙が上がり、続いて焦げ臭い匂いが鼻を衝いた。何が起こった?とあちこち見まわすと長袖Tシャツの袖がエキパイに接触した事が判明。エキパイの接触した部分は薄茶になっていたので、急いで荷箱からウエスを取り出しエキパイを拭いた。焼けているうちに拭けば痕は残らないのです。
お客さんを見送った後、エキパイにくっつけてしまった長Tの袖を見ると黒く変色していた。何気にその部分を触るとパラパラと崩れ落ち、大きな穴が現れた。コットン100%が炭化するとは相当な温度なんだなと思うと同時に、アメリカンに乗る方がエキパイにバンテージを巻く理由を身をもって知った夏の昼下がりでした。
