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無言の抵抗

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板橋区某所のガソリンスタンドより、マツダ・ユーノスコスモの解錠依頼。

現場のガソリンスタンドは給油レーンだけに屋根があるセルフ、お客さんは店内でお待ちだった。屋根下に入っているのに跳ね返りで濡れてしまうくらい雨が激しかったので、店内をお借りしてご本人確認。その際、お客さんは首を傾げながら「原因が分からないんですよ鍵を閉じ込んだ」と言われた。そして「構造上、自分でやらない限りありえないんですよ、この車のインロックって。でも自分でやった覚えはないんですよね」と続けた。意外と無意識でロックをかけてしまうことはあるかもしれません。ですがそれも確証がない以上推論でしかありません。何等かの不具合が出てロックしてしまう場合もあるので、その旨を伝えて作業を始めた。

経年劣化が元と思われる引っ掛かりが少しありましたが無事に解錠。そして車内のロック部分を見てみると完全に解除されていなかった。指で僅かに触ると解除の正位置まで戻ったので、今回の原因はここにあるのかもしれません。店内から雨を避けて走ってきたお客さんにその事を伝えると、「売られるのを嫌がってんのかなぁ…」、そうシミジミと呟いた。

聞くところよによると、お客さんは新しい車を購入予定で、これからコスモの下取り査定に行くとの事。「車は10年乗ると魂が宿るって冗談で言いますよね?あながち冗談とは思えなくなってきましたよ」。お客さんはそう言いながら雨で少し汚れたコスモを慈しみの目で見ていた。

「新車で買って今日まで大きなトラブルも無く走ってくれたんだよなぁ。思い出は山のように詰まってるんですよ。売るのやめようかな… いやいや2台も車は必要ないし、まして維持が大変だ。でも愛着があるんですよねぇ… 」査定に行く決心をした筈のお客さんの心に迷いが生じてしまったようです。そんなコスモの思い出話しを聞かせて頂きながら、お客さんと二人、凛と佇む黄色い車体を暫し眺めた。

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