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置いてけぼり

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98年トヨタ・クラウンの解錠依頼で筑波山の麓まで。

現場は大きな農家さんで、車は昼間でも真っ暗な大きな納屋の中にコンバインと並んで停めてあった。鍵が無い事には昨夜気付いていたらしく、それから半日以上かけてあちらこちらと探したらしいのですが結局は見付からず、今回の依頼となったようです。「爺さんはトランクの中に鍵があるかもって言ってるんですよ。私は無いと思うんですけどね」と教えて下さったのはお婆ちゃん。持ち主のお爺さんは畑仕事に行っているらしく立会いを頼まれたとの事です。「わざわざ遠方まで来てもらって申し訳ないんですけど、万が一鍵が無かったとしたらディーラーさんが車ごと持って行ってくれる手筈になってるんですわ。なんで取りあえず開けるだけ開けて貰っても良いですかな?」とお婆ちゃんは申し訳なさそうに言われた。そんなお気を使って頂かなくても大丈夫ですよーと言いながら速攻でドアを開けてトランクオープナーを押すがスカっと軽い手応えのみ。あれ?オカシイな?ともう一度押してみたが手応えに変わりはなくトランクも沈黙したまま。原因は不明ですが恐らくオープナーが壊れていると思われます。と言う事でトランクの解錠に移った。

真っ暗な納屋の中、運転席からトランクまで移動するのも足元が良く見えない僕は恐る恐る。その横をお婆ちゃんはしっかりした足取りで追い抜いて行く。暗くて足元が見えないので気を付けて下さいと僕が声をかけると「あれ?アンタさんは見えないのかい?若いのにw」と笑われてしまった。えっ!こんなに真っ暗なのにお婆ちゃんは見えるんだとちょっとショックを受ける。夜目が利かないなら肝油を食べなきゃダメか?とか考えましたが、結局は明るいスコープで鍵穴を覗いた直後なので見えなかったと気付きました。多分鳥目じゃないと思います。

そんなこんなのでなんとかトランクに辿り付き、それでも作業はサクッと終了。その後、トランク内をくまなく探しましたが結局鍵は見付かりませんでした。

「じゃぁ後はディーラーさんにお任せするので車検証だけ出して貰ってもいいですか?」とお願いされたので、運転席から車内に入り助手席のロックを外す。すると車内に何かの息遣いを感じ、想像の域を超えた状況に一瞬で恐怖が湧き上がる。ついつい身体もビクっ!とするが、暗闇での急な挙動は事態を悪化させる事を本能は知っている。呼吸も浅くガッチリ固まったまま、落ち着け~と自分に言い聞かせながら左手に持っていたLEDランタンのスイッチを入れる。そして左を向く… するとそこには犬が涼しい顔をして乗ってました。もー心臓止まるかと思ったぞーっ!とハムハム甘噛みをする犬を全力でモフりながら助手席のドアを開ける。するとお婆ちゃん「あらーゴメンなさいね。この犬はいつも爺さんとこの車で畑に行ってるんだけど、今日は車が出せなかったので置いてきぼりなのよ」と教えてくれたのでした。

僕がドアを開けてトランクに移動したどこかのタイミングで、犬は開いているドアからコッソ~リと車内に入った模様です。いや~それにしても暗闇の密室で、想像し得ない何者かの息遣いを感じるってのは尋常じゃ無いくらいの恐怖です。はあぁ… それにしてもビックリした。

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