
【父 バイク編】
6年前の冬に帰省した時、突然「そろそろお父さんに携帯を持って貰おうかと思ってるのよ」と母に言われた。えっ!父さん携帯持つの?とビックリして聞き返すと、居間のソファーでテレビを見ていた父が「そんなもんはいらん」と一言。それでも母は「最近はここら辺(北海道)も山奥じゃなければ携帯は繋がるみたいだし、そもそも公衆電話がなくなってるでしょ?もし何かあったら連絡するのが大変だからね」と言っていた。
父は定年後、それまでの仕事の延長線上の様な事をライフワークにしていた。それは野生生物の保護活動だったり森を守る取り組みだったりで、基本屋外、それも結構な森の奥へ、冬場でもデカイかんじきを履いて行ったりしてました。もう間もなく70歳になろうと言う年齢を考え、母は心配して携帯を持って欲しいと思ったけど、当人はピクリともせず「いらん」とあまりにもな無碍さ加減…その時はそれ以上具体的な話しもなく終わりました。
東京に戻って数か月、必要ないと言ってる父を携帯屋さんに連れて行くのは不可能に近い、どうしたもんか…と悩んでいたが、父に契約させるのが難しいならば、僕が2台目として契約し、それを送り付けてみたらどうだろうとの思いに至る。奇しくもその時は6月、父の日のプレゼントにしてしまえば無下にも扱えまい。と言う訳でダッシュで携帯を買いに行き、不敵な笑いを浮かべながら送ってみたのでした。
父の日当日、母から「余計なモノをよこしおって、なーんてさっきまで言ってたけど今は説明書と睨めっこでアドレス帳を登録してるみたい」と電話があった。その後ろで父が笑いながら「いらんことすんな#」と言ってるのが聞こえてきて、取りあえず使ってくれそうな雰囲気だったのは正直嬉しかったです。
それから数か月後の父の誕生日。毎年好物である納豆を各地から厳選して送るようにしてたのでその年も例年に漏れず納豆を送りました。誕生日当日、荷物が到着すると母から「お父さんが納豆ありがとうって言ってるよー」と電話が来るのですが、その日は夜になっても連絡がありません。もしかして発送ミスか荷物事故か?とネットで配送状況を確認してみると配送済みになっている。受け取っているのに連絡が来ないのは珍しいな?とブラウザを閉じた時、丁度僕の携帯にメールが届いた。
件名 : 荷物本文 : 納豆が届きました、ありがとう 父
70歳手前で初めて携帯を持った父からのメール。連絡が遅かったのは説明書と格闘しながらメールを打っていた為だと思うと、ちょっと涙が出ました。
【父 逸品編】
