
昨年初春、ひょんなことから実家近くに住む二十歳の女子大生と知り合いました。と言ってもその後は特に交流も無く月日が流れます。
初夏、帰省した際に父の遺品整理をしていると膨大な蔵書の取り扱いに困りました。全てが専門書で、素人に分からない貴重な書籍もあるらしいのですが、名前が書いてあったり書き込みがあったりと、古書の流通に乗せるのが困難な本ばかり。ただ面倒だからと安易に捨ててしまうのは躊躇われます。そんな捨てる決心がつかない大量の本を、どうしたものかと家族で悩んでいた時、ふと大学生の事を思い出します。もしかすると彼女が必要とする本があるかも?と。
初秋、またまた帰省の際、大学生と連絡を取り実家まで本を見に来て貰いました。昼下がりの蒸し暑い最中、3時間以上もかけて興味のある本に目を通し、段ボール4~5箱分を引き取ってくれたのは本当に助かりました。
初冬、本を引取ってくれたお礼と称し、夕飯に誘った際に彼女の夢を聞きました。俯き加減でも確かな口調で自分の目指す道を話す。そこは易々と踏み入れない領域、その事業を生業にする覚悟の奥にある不安は計り知れません。一度踏み出せば後戻りが容易ではないが故、求める理想には必ず辿り付かねばなりません。
彼女が発する言葉の一つ一つには重い決意があります。その揺るぎない考えと姿勢で真っ直ぐに見詰められると、残念な大人の僕は目を逸らせるしかありませんでした。
助人の描く”目標”に向かい脇目も振らず走っては転び這っては立ち上がった11年。知らず知らずのうちに仕事で得たモノと引き換えに、大切な何かを失ってはいないだろうか?そんな思いにかられます。果たして自分の”夢”は何だったのか? 答えが直ぐに出てこない事に苛立ちにながら記憶の奥底をさらってみるが、ありきたりな夢の一つさえも出てこず、それでもなんとかひり出したのは、得も言われぬ”何か”の成れの果てでした。
皆さん、夢はありますか? 昔、思い描いた夢を覚えていますか?僕の夢は過去も未来も、いつのまにかボンヤリとしたものになっていました。
