
シェビーバンの現場から拠点へ戻る最中、三郷市から国産高級車の解錠依頼。高速を降り数キロ、目印の神社に到着。現場は一区画が広大な4桁番地、躊躇無くお客さんに連絡をする。程なく合流し解錠を速やかに完了した。
お客さんを見送った数分後。神社の木々が風と共にたてる葉擦れの音に混じり、何処からともなく声が聞こえるような気がした。辺りは街灯もなく、深く重い闇に閉ざされた中に一人ぼっち。「ちょぉぉっと怖いかもしれないw マジで」と独り語ちた矢先に、「 つ ぅ くぉ 」 と聞こえてきた。ここに来てハッキリ人間の声だと分かったので心霊モードは終わり。音の元を探すべく耳を澄ますと 「 ひ ぁ めい ぁぁあ」自分の足音で声がかき消されないよう忍び足で音の方に向かうと、木の陰に酔っ払った背広のおぢちゃんが倒れていた。
この寒いのにこんな所で眠り込んでは風邪を引いてしまう。「大丈夫ですかー」と声をかけ肩をゆするとむっくりと起き上がり胡坐をかく。焦点の定まらない眼で僕の方を見「 か ぁ ぇ お ぇ n」と意味不明な言葉を発する。聴き取れないし意味も分からないので「なんですか?」と聞き返すと、ちょっと怒り気味で 「 ちゅくにぇ! 」更に意味が分からない。「え!?なんですか?」と再度聞き返すと、「ちゅくにぇはまだですか?」とおぢちゃんが言った。ちゅくにぇってなに???? もしかして串焼きのツクネ?と言う事で「タレですか?塩ですか?」と振ってみると元気よく「塩!」との返答。間違いない、このおぢちゃんまだ居酒屋にいると思っている。取りあえずしっかり起きて帰った方が良いですよと言うが、「ちゅくにぇまだだし にぇギマも頼んだ 寒いのでおでんも欲しい」埒が開かない。正直面倒臭なったので「ちゃんと帰って下さいね」と言い立ち去ろうとすると、「にぇギマー!」と言って僕の足を掴んだ。それを反射的に振り払おうとするとガッシリと足に抱きつかれてしまった。激しく面倒な事になりそうな予感。どうしようかと思案中、ナイスタイミングで自転車のお巡りさんを発見 Help Me,お巡りさんが近付くと何故か僕の足を離すおぢちゃん。後の事はお任せして現場を後に。
拠点に戻りオーバーパンツを脱ぐと、太ももにおぢちゃんの鼻水と涎が付いてた。それを雑巾で拭き取っているとどっと疲れが込み上げてくる。「はぁ~」とため息をついて夜勤の夜は更けて行ったのでした。
