
某ペット霊園でマツダMPVの解錠依頼。悲しみにくれるお客様をお待たせしないよう速やかに解錠を完了した。現場を後にし、近くにあった川の堤防へ上る。辺りは散り始めた桜の花が舞、その景色は遠い記憶を呼び起こした。
子供の頃、何頭か犬を飼っていた。その中に父親の知り合いから預かったまま、家で天寿を全うした老犬のコリーがいた。名前は当時流行っていたのもあって「ラッシー」
ある時、保育園に通う兄の帰りが待ち切れず迎えに行こうと考えた。それを母親に告げるとラッシーを連れて行けと言う。賢く従順で優しい遊び友達、大好きだったので連れて行く事に。後に知ったのですが母親曰く「一人で行かせるのは心配だから」らしい。それだけ信頼の出来る犬だったようです。田舎でのんびりとした時代、リードも付けず並んで歩いた。
保育園に到着したが下校にはまだ随分と時間がある様子。仕方がないので隣にあった公園(と名の付く野っ原)で、ラッシーと本気で遊びながら待つ事に。元来遊び好きな犬、老犬とは言えまだまだ体力は十分。兄が保育園から出てくる頃には僕は遊び疲れてクタクタになっていた。
その帰り道。僕は疲れきってとうとう歩けなくなってしまった。そしてもう歩けないと駄々をこねる。困った兄は「ラッシーに乗せてもらおう」と言いだした。大丈夫かな?と思いながらラッシーにまたがると、意味を悟ったのかしっかりとした足取りで歩きだす。僕は嬉しくなって首に抱きつくと毛並みは日向の良い匂いがした。それは北海道の遅い桜が散り始めた頃だった。
それから数年後の桜の散る頃。ラッシーは天寿を全うした。動物が死んで初めて本気で泣いた時でした。
状況が許すなら何時かまた犬を飼いたい。散り行く桜を見ながらそう思った。
