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職人の手

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某区の修理工場駐車場よりVWニュービートルの解錠依頼。工場の入り口で迎えて下さったのは社長さん。車の前ではご依頼を頂いた社長の娘さんがお待ちでした。

照りつける陽射しの中、速やかに内溝キーを解錠する。ドアノブを引いて開けた後、社長さんから「鍵の仕組みは理解している。その先のドアが開く仕組みも理解している。理解しているからこそ君の技術が本当に素晴らしいのだと分かる」と、お褒めの言葉を頂いた。そして吸っていた火のついた煙草を指先でもみ消し吸殻をポケットにしまうと、「ちょっと茶でも飲んで行きなさい」と事務所に案内された。事務所では娘さんから冷えた麦茶とせんべいを出され恐縮しながら頂いた。

その後、暫く社長さんから質問をされる。横ではニコニコと笑顔で娘さんが耳を傾けていた。

あまり長居もご迷惑になるので引き上げようとしたとき、「この手があの難しい鍵をあけるんだな。職人の手だな。」と僕の両手をギュッと握り関心したように見つめた。すると「もぉ!お父さん迷惑だからやめなさいよ!!」と娘さんが叱る。「おおっと失礼しました。じゃ気を付けてね」と少し照れて社長さんは言われた。

長年の仕事で間接が大きくなり太くなった指と幅広で肉厚の無骨な社長さんの手は優しく温かかった。そこには数えきれない程の車を修理してきた証が刻まれている。その社長さんの手こそ本物の職人さんの手だと思うのです。

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