
早朝、スバル・サンバーのバッテリー上がりで向かったのは、東京に隣接する埼玉県某市。そこは現在開発が進んでいる地域で、住所表記や道の変化が激しい。前回近くに行った記憶を辿りながら現場に向かうが、工事中で通れない所や、以前とは比べ物にならない位道路が太くなっていたりと、方向感覚はいつしか失われた。おまけに工事中の道には砂利が散乱していたり、コーナーの先に砂が浮いていたりと一時も気が抜けない。慎重に慎重にと唱えながらナビを頼りに現場へ向かった。
依頼のあった車輌は、区画整理で均された広大な空き地に面した駐車場に停まっていた。目の前には電車の高架橋、その先遠くには高速の高架が重なり、何も無い荒れた土地と相まって近未来の様な風景がそこにあった。それを見ていると以前何処かで見た事がある様な気がしてくる。どこで見たのだろう?と薄くなりつつある記憶を紐解くと、僕が東京に出てきた20数年前の湾岸地域の風景に似ているのだと気付いたのでした。
東京に出てきた当初、大井町に住む友達の所に居候していた。当時、お金はないけど時間は売る程あったので、良くふらふらとあちこちを歩いていた。僕にとって故郷と大きく違うなぁと猛烈に感じた景色は超高層ビル群ではなく、巨大な倉庫が果てしなく連なった海沿いや、入り組んで複雑な高速道路の袂や、海に浮かぶモノレールや、工業地帯やコンビナートのある風景だった。寂しいのだか興奮しているのだか自分でも分からないが、ただ惹かれている事だけはハッキリ分かっていたので、足しげくも頻繁に訪れては歩きまくった記憶があります。
サンバーのジャンプ作業を終えた後、冷えた身体を温める為コーンスープのある自動販売機を捜す。幸いにも近くにあったので小銭を入れボタンを押すと、バタン!と大きな音を立ててコーンスープは受取口に投げ出された。その瞬間、自販機の後ろから小さな動物が飛び出してきた。それは、まだ小さな仔猫。自販機の排気熱で暖をとっていたのでしょうが、僕がコーンスープを買った音で驚いて飛び出したようです。中腰のまま僕と自販機を交互に見詰め、暫くすると納得がいったのかその場で丸くなった。その毛玉みたいな様は何ともめんこいが、毛が生え揃っていないのか何となく薄ら寒そうに見えた。
そう言えば東京に来て猫が多いなぁと思った。僕の田舎は北国の地方都市なので、繁華街でたまに見かける位。住宅街では殆ど見る機会は少ないし、まして冬場は皆無に等しい。そんな事を考えていると、精一杯毛を膨らませ丸くなってる仔猫が小刻みに震えているのに気が付いた。温かい場所で寝ていたであろう所を叩き起した事が仔猫に悪い様な気がしてきて、残りのスープを一気に飲み干しその場から離れた。
間もなく空っ風が吹き出し冬の足音が聞こえてくる。そしてあっという間に年の瀬だ。そろそろ冬支度を始めないといけないなと、近未来的な荒廃を思い浮かべてしまう風景をバックに佇む仔猫を見て思ったのでした。
