
東京近郊某所にあるガソリンスタンドにてBMW・M5の解錠依頼。エンジンがかかったままの車輌は遠目でも分かるくらいの陽炎に包まれていた。お客さんの携帯に現着した連絡をするがコール無しで留守電に飛んでしまう。何度かけ直しても留守電のままなのでメッセージを残し折り返しを待つ。一応ガソリンスタンドの方にお客さんの事を聞いてみるが、とても忙しいらしく「携帯に連絡してください」としか言われなかった。連絡の手段はお客さんの携帯しかないので、暫し折り返しの連絡を待った。10分位経ったところでお客さんからコールバック。それから暫くしてスタンドに到着された。
作業の準備をしていると、お客さんがスタンドの方と何やら話しているのが見えた。話の内容はまでは遠くて聞き取れませんが、お客さんの声には怒気が含まれていた。口調は穏やかだが明らかに怒っている。対峙するスタンドの方は俯き頭を下げているように見えるが謝罪している感じではない。何となく気になりましたが僕のタッチするところではありませんので依頼された解錠作業に集中した。
解錠後、現金依頼でしたので精算をお願いするとお客さんの怒りが爆発した。と言っても僕に対してではなくスタンドへの怒りです。「僕が貴方に対してお金を払うことに怒っているのではないんですよ、気分を悪くしたなら申し訳ない。何故怒っているかと言うとスタンドの対応に納得がいかないのですよ。今回の鍵の閉じ込みはスタンドの方がやったんですね。まぁこれは偶発的な出来事で仕方がないと思うのところもあります。これに関して僕が鍵開けの代金を払うのも致し方ないかな?って気も無きにしも非ずです。ですけどね、閉じ込んだ事を報告しに来た店員が開口一番”ドアを閉めただけでインロックする可能性があるなら最初に説明してください。ウチでは対応しかねます”ってぬかすんですよ。ありえます?」お客さんの怒りは収まるどころか更に激しくなっている。僕は直立不動でお客さんの話に耳を傾けた。その時、スタンドの制服を着た年配の方が軽トラで入ってきて、車を停めると一目散にお客さんの所へ走り寄り帽子を取ると「〇〇さん!スミマセンでした!!代金はウチでお支払いいたします」と深々と頭を下げた。
その後、店長さんとお客さんの話しが続き、状況的に動くことが出来ない僕は無言のまま何となく話しの輪の中に居た。そこで分かったのは、お客さんの怒りを買った店員さんは店長さんの息子で、その息子はスタンドの仕事を手伝うのが嫌で、渋々やっているので今回のような事を起こしてしまった、と言うことらしい。話しの最後の方は、馴染みの店長さんと話しをしたお客さんの怒りは収まり、逆に息子さんの事で頭を痛める店長さんを慰めていた。
一区切り付いたところで精算させて頂き現場を後に。その戻り道、若かりし頃の自分と照らし合わせ色々と考える。 ― 親の心子知らず ― ふとこの言葉が脳裏を過ると、心の中でもんどり打ってのたうち回ったのは内緒の話です。
