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自分が好きな先輩

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「あ!先輩がこっちにくる… 」お客さんはそう言うとちょっと複雑な顔をされた。「え~っとですね、今こちらに向かっている人は会社の先輩なんですが、ちょっと変わった人でして… なんて言ったらいいんだろう??話しの内容がー… えーっと」何とか僕に伝えようとしてるのですが良い言葉が見当たらない様子。そうこうしているうちにセンパイは直ぐ近くに。「要約するとですね、悪い人ではないのですが思考が”俺様”的なんです。なので変な事を言っても悪気はないので気にしないで下さいね」とお客さんが言い終えた直後にセンパイは僕らの目の前に着いた。

場所はある企業の社員寮。お客さんはVTR250のオーナーさんでバッテリー上がりの依頼を頂いた。作業後、バイク話しが弾んで談笑を続けていたところ、それに気付いたセンパイが寮から出てきた。僕に気を使い心配するお客さんを他所に、センパイはニコやかに話しかけて来るので三人でバイク談義に花を咲かせた。それから暫し、お客さんが気にして僕に伝えた意味が少しずつ理解できてきた。

センパイはヤマハのVmaxに乗っている30代後半の独身男性。お客さんより2年センパイで仕事の部署は違えど、同じ寮で暮らす数少ないバイク乗りと言う事で、入社以来何かと仲良くさせて頂いているらしい。見た目も普通で話し方も至って普通なセンパイ。話しの内容も突飛な事も無く普通なんですが、ある時点で僕は気付いてしまいました、お客さんが心配していた事。それは何かと申しますと、どんな内容の話しをしていても何故か最後はセンパイの話しになっているのです。そうなんです、話しの流れを全部自分の所に持って来て自分語りをするんですねぇセンパイ。そして完全に自分の話しに流れを持って行けると、今度は自分の好みのモノを猛烈に勧めてくるのです。例えば、自分の所有するVmaxが如何に素晴らしいバイクかと言うのをトクトクと力説。その後その素晴らしさに気付いてそれを選んだ俺は凄いだろ?と同意を求める。角を立てまいと曖昧な返事をするとそれは同意とみられ、君も素晴らしいと思うならVmaxに乗るべきだと押してくる。ここで自分の好みはVmaxじゃないと言うと、それはセンスが悪いと言う方向に持って行こうとするのです。で、この一連の流れが、語気を強める事もなく、時に「うんうん」と相手の話しを聞いている風を装って進められるのです。慣れていない人は完全にセンパイのペースに呑みこまれるのは間違いありません。

センパイが居なくなった後、お客さんがクスっと笑いながら「助人さん何とか耐え抜きましたねw 先輩は悪い人じゃぁないんですが話しがあの調子なので面倒臭いんですよw」と言われた。流石に慣れっこなお客さんは冷静な対応です。それに比べて僕はと言えば、危うくVmaxを買う約束をさせられそうでした。あくまで個人的な好みとしては、同じヤマハの国内仕様ならVmaxよりもFZ1 FAZER GTの方に食指が向きます、センパイには全否定されましたが。

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