
VW・GOLFの解錠依頼で現場に到着すると、車輌は右ドアを塀にピタリと寄せて停まっていた。傍からパッと見た感じだと、「かなり狭いけど何とか鍵穴を覗けるだろう」と思ってましたが現実はそんなに甘くはなかった。まず隙間に入る為にはドアミラーの位置がベルトの上に来るよう腰を落とし、お腹はヨガ修行者の様に凹ませる必要があった。息を止め横隔膜に力を入れて内臓を持ち上げる。それでやっとこドアミラーをクリアしてその先の隙間へ。工具をセットしながらしゃがむ事が出来るかな?と膝を曲げると何とかしゃがめそうな感じ。後ろの壁との摩擦で自由度は少ないけど何とかスペースを確保した。これで行けるか?と鍵穴を覗こうとしたら頭が隙間に入らない。厳密に言えば頭は入って鍵穴は覗けるがそのスペースしかない。工具を動かす程の余裕が一切無く、覗く事しか出来ないのです。これじゃ駄目だと言う事で違う方法へ変更。
覗けないなら覗かない方法での解錠と言う事で、違う工具を持って再度挑戦。先程よりは楽な姿勢で行けそうですが、やはり作業スペースは狭くて時間が長引くと身体のネジリが負担になりそう。1分2分と時間が経つに連れ息が上がり無駄に大量の汗が滴ってきた。右のわき腹は伸びきり左の肋骨は腰骨に当たり内側にシナっている。左の肺が圧縮されているのか呼吸が浅くなっていた。そんなこんなで苦戦を続ける事数分、キーシリンダーがコクっと傾きラストワンの予感。一旦体勢を楽にしたかったがここで何かあると洒落になりません。早くなる呼吸を整えるだけにしてラストワンを必死に探した。悩ましい甘美なるウエハースは最前列にあり、それをサクっと食してキーシリンダーを回した。それと同時に室内灯が点灯しお客さんが「やった~これで帰れます!!」と歓喜され、そしてホッとされていた。
クッション素材でしっかりと養生した後、ゆっくりと慎重にドアを開けた。そして助手席にあるバックを取れば宜しいですか?とお客さんに聞くと、「いえ、鍵はそこじゃなくてですね、こっちなんです」と車輌の後ろに回られ指し示したのは最後尾のラゲッジスペース。そう、お客さんのVWはGOLFでもステーションワゴンのGOLFヴァリアントなんです。腕が一本しか開かないドアからワゴンタイプ車輌の最後尾はあまりにも遠い。でもですね、あの手この手の奥の手を駆使すると同時に、お客さんにもご協力頂き何とかキーを取り出すことに成功しました。
今回は色々な意味で厳しい条件でしたが無事解決です。暑さで流れた汗と、テンパって流した変な汗の数だけ、人は成長するのだなと、ちょっとシミジミ思ったりしたのでした。
