
毎年、一年の統括として気の利いた事を書こうと無い頭を絞るのですが、今年は10年の節目という事もあるので創業当時の事を振り返ってみようかと思います。
当時を思い返すに当たり絶対に外せない依頼が二件あります。一つ目は助人を始めて三ヶ月目にカローラバンのキーシリンダーを壊した件です。これは経験の無さからくる焦りで確認を疎かにした為に起こした事で、全く言い訳の余地もありません。お客さんには多大な迷惑をかけて本当に本当に申し訳ない思いでした。そして他の隊員にも迷惑をかけてしまったと自責の念に苛まれます。助人の看板を背負っている以上、僕のミス=助人クオリティーになり、その事で依頼が無くなって皆が喰いっぱぐれてしまったらどうする?そうなったら僕はどのような責任が取れるのか?との思いを巡らせ、その苦しい胸の内を紛らわせようと自分を庇護する言い訳を並び立て都合よく脳内で反芻します。でも結局何の解決にもならず幾晩もの眠れぬ夜を過ごしました。
二つ目はカローラバンの一件から6日目の夜、銀座プランタン裏でのベンツSクラスのトランクインロック。それは奇しくもカローラバンと同じアシスタントさんからでした。当時駆け出しで情報が少なかった中でも、ベンツの下向きトランクの解錠は著しく困難という巷の噂は知っていました。それにその時点で既に助人でも何度か下向きシリンダーの依頼を受けており、ドアを開けてもトランクは開かなかった、下向きの解錠は無理ではないかと言うのを他の隊員からも聞いていました。現場で初めて目の当たりにするSクラスのトランクに足が竦みます。武者震いなのか怯えているのか震えながらも脳裏に浮かんだのは「本当にピッキングで開けるのは無理なのか?」と言う純粋な疑問。勿論開けられる自信も根拠もありません。そこにあったのはもう二度とミスは許されないという切羽詰まった思いと無知と根性だけです。作業中パトカー3台に囲まれて職質を受けたり、長期戦の為腕が上がらなくなりながらも僕は下向きシリンダーの初解錠に成功します。トランクが開いた瞬間、未踏の領域に達した喜びよりも「これでまた助人に依頼して貰えるかもしれない」と言う泥臭い安堵感が心を占めました。そしてこの時の解錠方法は一つのスタイル、一つの術として助人に定着し後の実績を築いて行く事となったのです。
あれから10年、いまだ困難にぶち当たる度、僕はカローラバンのお客さんからかけて頂いた優しい労いの言葉を思い出し、姿勢を正して全力で挑むのです。
本年も多くのご依頼と感謝の言葉を頂きありがとうございました。来年も精進してまいりますので助人サービスをよろしくお願いします!
