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黄昏の彼方

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フォード・フォーカスの解錠依頼で埼玉県某所まで。現場は巨大なマンションン入口付近、お客さんは引っ越し真っ最中との事です。

最近ではジャガー共々依頼が少なくなったアブロイキー。各隊員のタイミングによっては半年どころか一年近くも作業をする機会が無い事も。かく言う僕も前回がどのくらい前だったか思い出せないほど暫く振りです。

鍵穴に工具をセットして感覚を思い出しながら優しくピッキング。思いのほか感触が良く、直ぐ開きそうな感じだったのでお客さんにもう直ぐ開きますとお伝えした。すると「それは大変ありがたいです。実は今朝から嫁の逆鱗に触れまくってですね、今も上で激怒ってるんですわ。なので早く戻れるのに越した事はありません、助かります… 」と憂鬱な顔になるお客さん。突っ込んで聞くのも何なので当たり障りのない相槌を打つと「まぁ原因は僕なので怒られても仕方ないんですけどね … 」と大きなため息が出ていました。

問題なく解錠を終え、マンションに戻るお客さんはラゲッジにあった段ボール箱を抱えていた。ドアを開けたあと車内からキーを取り出したのは確認していたけど急に胸騒ぎを覚え、余計なお世話とは思ったけど「キーはお持ちですか?」と聞いてみる。するとお客さんは「はっ!」としてポケットをまさぐると、段ボール箱を落としそうな勢いで絶望的な顔になってしまったのでした。

一度車内からキーを取り出したんですが、ハッチバックから荷物を出した時にまた車内に置いて閉じ込んてしまったようです。「朝からずーっとこんな調子なので嫁が怒るのは無理もないですよね… 」あまりにも落ち込んだ様子なので「二度目のインロックは僕しか知らないので大丈夫ですよ!!」と言ってみましたが、その言葉はお客さんの心に響くことはなく、黄昏に包まれたまま遠くを見詰め続けている姿が辛かったです。

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