
「バイクって楽しいですか?」穏やかな秋晴れの下、そう質問をされたのは女性のお客さん。暑さ寒さや雨風云々、正直楽しくない事もあるのであれこれ言わなきゃって思うのですが、多分そんな事を聞きたい訳ではないと思うので、「こんなに気持ちの良い日に乗るオートバイは最高です」と素直に答えた。
「バイクの運転って難しいですか?」僕の目を真っ直ぐ見てそう聞かれるので、「頭で考えるより実際乗ってみた方が遥かに理解し易いと思います。自転車に乗れるまで練習したようにオートバイも練習すれば運転は難しくありません」とお答えした。
「バイクって怖くありませんか?」伏し目がちにそう聞かれたので、「剥き身でエンジンにしがみ付いて走っているようなモノなので、何かあった場合の怪我は軽傷ですまない事もあります。そこだけ切り取ると確かに怖いとは思います。ただ、そのリスクを理解した上で、それでも楽しいのが僕にとってのオートバイです」と包み隠さず伝えた。
興味があるのは間違いないのでオートバイに乗ってみたいのでしょうか?とお聞きすると、「使わなくなった主人のバイクがあるので私も乗ってみようかなって思ったんです」と。既に車輌があるなら是非免許を取ってみては?それに旦那さんも乗るなら色々教えて貰えると思うし、と僕が矢継ぎ早に言うのをお客さんはニコニコしながら「うんうん」と聞いていました。
一頻り僕が話し終えると、「実は処分しようか悩んでいたんですが、私、免許取って主人のバイクに乗りますね」と決断のお言葉。それは良かったと思う反面、処分を検討していたのが気になり、旦那さんが乗らないから処分を考えてたのか聞いてみると、
「主人、半年前に病気で亡くなったんです」
お客さんが免許を取ってまでオートバイに乗ろうとするその思いが突き刺さり、僕は息が詰まるような息苦しさのなか俯く事しか出来ませんでした。
