
昔、ある人と遠くの雪山を眺めていました。
その方はとても立派な人で、尊敬の念を抱かずにはおれないのですが、若かった僕は少しばかり疑問に思う事がありました。それは、その人が時間やお金や労力の多くを、他の人の為に費やしている事。そして、しっかりとした収入があるにも関わらず、質素で慎ましやかな暮らしをしている事です。
僕は、雪に覆われ真っ白になっている山脈から視線を外さず、その素朴な疑問をぶつけてみました。「何故、自分の事以外に、そうまでして時間やお金や労力を使うのか?」。すると子供を諭すようにその人は言いました。
「昔、偉い人が言った言葉で、【誰かの為に生きてこそ、人生には価値がある】ってのがあってだな、この意味を理解する時がくれば今の疑問も晴れるだろう」
果たして、僕はあの日の言葉を理解出来るようになったのだろうか? 打算計算煩悩塗れの頭では、完全に理解したとは正直言い難い。でも少しばかり言えるのは、当時はぼんやりとした輪郭だけだったその言葉に、色が付き始めていること。
僕があの人のようになれる自信は全くありません。でも、あの人が言った言葉をあの人みたいに言えるよう、努力しなければいけないなと、近頃よく思うのです。
