
カレーの香りには、記憶を呼び覚ます力がある。僕の地元には、幼い頃から慣れ親しんできたカレー屋がある。店の名は「インデアンカレー」。地元のソウルフードとして愛され、わざわざ遠方から食べに来る人もいるほどだ。僕自身も小さい頃から何度も通った。大人になっても、ふとした瞬間に食べたくなる、そんな味だ。
ところが、その「当たり前」が揺らぐ出来事が起こる。ある日会社でこの話をすると、社長がPCで検索をかけ、「これじゃないか?」と画面を見せてきた。そこには、僕が見慣れたターバン姿のロゴが。間違いない。そう思ったがよく見ると大阪の店だった。そして、なんと東京にも店舗があるという。「そんなはずはない」と思いながらサイトを確認すると、名前もロゴも全く同じなのに、カレー以外にパスタまで提供していた。違和感が募る。
「これは地元のカレー屋のパクリじゃないか?」そう思った。しかし、さらに詳細を確認すると「創業70年」の文字が。そんなに長く続いているのか?混乱する僕に、C隊員が驚きの情報をもたらした。地元のカレー屋の店主が、大阪の店で食べたカレーに感動し、自分の店を開いたというブログを見つけたのだ。
地元こそが発祥だと信じていたのに、実はそのルーツは大阪にあったのか、でも地元のカレーのほうが絶対美味しい。衝撃を受けた僕は、確かめるため東京店へ向かった。
店は東京駅近くの商業ビルの地下にあった。ロゴはまったく同じ、店の雰囲気もそっくりだ。厨房を囲むカウンター席の配置まで地元の店に似ている。席に座り、迷わずカレーを注文。ルーが少なめという口コミを見たので、大盛りでお願いした。
注文からわずか15秒、カレーが目の前に。見た目は少し違う気がする。一口食べると、大阪カレー特有の甘みの後に突き抜けるような辛さが訪れる。甘さと辛さのダブルパンチ。しかし地元のカレーとは少し違う。「東京で地元の味を楽しめるかも」と期待していたので、正直少し残念だった。でも、これはこれで美味しい。 と思うと同時に地元のカレーが恋しくなった。久しく地元に帰っていないので久しぶりに帰ってみるのもよいかと思った。
結局のところ、店のルーツの謎は完全には解けなかった。しかし、一つだけはっきりしたことがある。ソウルフードとは「どこで生まれたか」ではなく「どれだけ心に残るか」なのだ。地元のカレーが僕の人生に刻み込まれていることに変わりはない。それならば、どちらが美味しいかを問うことに意味はないのかもしれない。
地元のカレー屋も、大阪のカレー屋も、それぞれの地で愛され、語られ、記憶に残る存在だ。そして僕の中で、このカレーはこれからもソウルフードとしてあり続ける。それこそが本当に大切なことなのだろう。
